アンドロイド:クレオパトラ・ヴィーナス

【特長&チート能力】
●世界一の人工知能による分析能力で瞬時に敵の能力を見極め、弱点を見つけることができる。
●無限の資金力で敵を買収することも可能。

『第一章 デス・ストーリーは突然に』引用

1.1 謎の超絶美人
 
 アラトはさっきから少し気になっていたが、この超絶美人、確かに見覚えがある。
 
(たぶん、間違いない)
 
 いまどき流行りの動画生成AIで超有名なAIタレントとそっくりなのだ。
 動画サイトやテレビのCM、駅構内の広告モニターとかでも見かける。しかし、それらは全て動画であって、三次元の立体として現実には存在しない。小学生でも知っている。
 
(じゃ、この目の前にいる女神様はいったい…… あのタレントの名は、え~と……、あー、忘れた)
 
「すっ、すみません。失礼ですが、どこかで見たことがあるような気がするんですけど、テレビのCMとかに出演されたことありませんか?」
「いえ、ありません。わたくしは大丈夫義理子です」
「すみません! 大変失礼いたしました!」

 §   §   §

『第二十八章 魔法少女VSアンドロイド』引用

28.2 魔法少女VSアンドロイド 試合開始前 アラトの部屋

 クレオパトラ・ヴィーナス。
 全身タイツのようにぴったりフィットしたボディスーツは、光沢のあるワインレッドカラーで統一、胸元だけが広くカットされセクシーさを強調している。柔軟性が高く格闘戦にも向いた戦闘服だ。
 マジかぁ~、と騒ぎたくなるほどのビューティフルフェイス、わずかな風になびくブロンドヘアー、ボディスーツに合わせた赤色系のサングラス、眼光が鋭く、それがまたエロカッコいい!
 
 映画やアニメに登場する女スパイもしくは泥棒ヒロインを彷彿させる。
 もし彼女がアメリカ人であるなら、アラトも学校で学んだ英語を必死になってスピーキングにしていることだろう。
 
「Wow! You’re the most beautiful lady I’ve ever seen!」
 
 てなかんじで。
 
 この美しい女性のスパイコスチュームを見るのは初めてなのだが、アラトは彼女の正体をわかっている。
 断言できる! 彼女は大丈夫義理子、その人だ!
 
 なぜ、アラトは彼女の正体を見破ったのか。
 大丈夫義理子は茶髪で金髪じゃない。要するに、金髪のカツラとサングラスで変装している。戦闘が始まる直前のシリアスな顔つきは、ふだんギリコが見せない表情だから随分と印象は違っているし、おそらく厚めの化粧で顔を変えている。
 
 それでも、『クレオパトラ・ヴィーナス=大丈夫義理子』という方程式は成り立っているのだ。
 
 なぜなら……。
 『クレオパトラ・ヴィーナス』は動画生成AIで超有名なAIタレントの名称だ。実際、アラトもふだんの生活の中で、彼女の顔をよく見かける。一番多いのはテレビのCMだろうか。
 そのテレビで見かける『クレオパトラ・ヴィーナス』の顔は、大丈夫義理子にそっくりなのだ。
 
 ギリコと出会った初日、アラトがギリコに『どこかで見たことがあるような気がするが、テレビのCMとかに出演したことはあるか?』という類の質問をして、『無い』という回答だったが……。
 そう、彼女は嘘をついていた。
 
 連想ゲームは単純明快だ。
 『クレオパトラ・ヴィーナス』という名前の試合出場者が観戦モニターに映っている。
 今朝、大丈夫義理子がアラトの部屋に来ていない。
 大丈夫義理子の顔は、あの有名な『クレオパトラ・ヴィーナス』に似ている。
 『クレオパトラ・ヴィーナス=大丈夫義理子』以外、考えられない。
 
 観戦モニターに映る女スパイは、体型や身長など見た目の雰囲気で大丈夫義理子が変装しているとはっきりわかる。
 どうしてかって、あまり話題にすべきことではないのだが……。
 出場者のある特定の部位に注目すれば、大丈夫義理子の特筆すべき個性に一致すると、ズバン、ドカンとわかっちゃうのだ。
 アラトはずっと毎日一緒に過ごしてきたのだから。

第二十八章 魔法少女VSアンドロイド   第三十五章 勇者VSアンドロイド