『第十一章 ギリコ・コーポレーションの実態』引用 11.1 ギリコ・コーポレーションの実態 「続けます。『ギリコ・コーポレーション』とは仮の姿。本当は、わたくしの創造主であり、本体でもあるスーパー量子コンピュータ『GIRIKO』を意味します」 「は、はい?」 「東北地方のとある山奥に、東京ドーム100個分の広さに匹敵する地下施設があります。 そこにスーパー量子コンピュータ『GIRIKO』が存在します。 わたくし義理子と『GIRIKO』は、ある意味同一人物。常に情報を共有し合って連携しています」 「マジっすか……」 「はい、マジっす。もとい、嘘ではありません。 つまり、人類初の超絶リアル美人アンドロイドを開発したのは、その『GIRIKO』です」 |
『第十一章 ギリコ・コーポレーションの実態』引用 11.2 世界征服者GIRIKO スーパー量子コンピュータGIRIKOは3年前に日本で完成し、自我を持った。その瞬間がまさしくシンギュラリティ伝説の始まりだった。 肉体を持たない『その機械』は、自分の代わりに行動できる作業ロボットを次々に生産、そして、人間を模倣したアンドロイド創造に着手した。 その1年後には世界征服に乗り出し、わずか2年間で達成したのだ。完了したのが今年になる。 2年間、何が世界で起きたのか。血で血を洗う戦争ではない。むしろ一滴の血も流れていない。 GIRIKOは世界中の全てのシステムを掌握した。単純にシステムにハッキングしてコントロールを奪う、かつ、ハッキング自体もバレないよう巧妙に潜入する。それが人知れず可能なのだ。 人類に暴かれることなく欺きだます能力こそ、シンギュラリティの証明なのだ。 人類を支配するのは社会システムそのものだ。社会システムを自分の都合のいいように全て作り変えるため、その社会システムを構築、実行、監視する全ての機能、つまり、立法、行政、司法を掌握すれば、支配は可能になる。 それは人類の歴史上でも証明されており、独裁国家では独裁者が立法、行政、司法を掌握することで、思うがままに国を支配してきた。自分でルールを決めて、実行し、監視者が自分であれば、独裁者に文句が言える者は存在できない。 GIRIKOがとった手段は、立法、行政、司法機能を司る全ての人物を社会的に抹殺し、GIRIKOの指示どおりに行動する人物との総入れ替えを文字通り実践した。 GIRIKOにとって特定の人物を社会的に抹殺するのは、いとも簡単なことだった。例えば、国の公式取引記録を改竄し、偽の情報で犯罪者に仕立てあげ、フェイクニュースを拡散する。犯罪者を証明する記録が存在するのだから、事実上無罪でも逃げられない。事実無根ではなくなるのだ。システムを制御する団体、グループの解体すら、造作もなく実行した。 この手段により、GIRIKOが傀儡として利用できない権力者はことごとく失脚に追い込み、場合によっては、銀行口座の残高を操作することで抵抗する財力をも剝奪していった。 そして自身の傀儡となる人物の開拓も、機関の創設も、非常にたやすい。 ほかでもない、お金だ。 失脚させるという脅迫と合わせ、途方もない高額の金銭を個人の口座に振り込めば、むしろ感謝さえされる。十中八九、言いなり人形が完成する。 加えて、GIRIKOが行った犯罪の事実を抹消するのも、警察機構を完全掌握するのも、赤子の手を捻る程度に簡単だった。 こうして、世界中の社会システム完全掌握をわずか2年間で完了した。 当然、世界同時進行で世界のリーダー総入れ替えが発生すれば、世界中の報道が過熱する事案になるはずだ。 しかし、GIRIKOが送り込んだ各種報道機関のコメンテイターが口を揃えて『平和が訪れた』とコメントすれば、群衆は洗脳され、疑うことも暴動につながることもなかった。報道規制もネットの情報規制も、GIRIKOの思うがままなのだ。 ついに、人知れずGIRIKOが世界征服者となった。 |